ずっと同じ
ふいに思い出したように、gas van santのparanoid parkを、観た。家で。
氏の映画の、学生が好きだ。生まれた時から学生で、ずっと卒業していかないような。世界と、本当に薄いうすい透明な膜で隔てられたような子供でも大人でもない人間たち。僕も、かつてそうだった。うすい膜に包まれて、まさしく。そうして過去を投影できるものがあると、少し安心する。この映画のように。
脆弱で、なま卵のようなこころと、強さ。内弁慶な、愛や恋や母性や父性。その時々の、若さと老いのシーソーに戸惑うような暮らし。
その頃のこと、忘れていってるから、忘れてはいかんなあと、思うのだろう。ずっと同じものには、憧れてしまう。
息のブランコ
しばらく更新出来てませんでした。バタバタしていて、というのは言い訳ですが。
ここ最近はずっとローラン・ビネのHHhHを読んでます。リョサ絶賛の話題作。圧巻。感想を言うのもおこがましい程の緻密さですが、読了したらここにもレビュー書こうかと。ラーゲリや東欧の戦中戦後関連の文学は個人的によく読むのですが、中でも個人的なマスターピースというか座右の一冊はこれ。
ヘルタ・ミュラー
「息のブランコ」
山本浩司訳
巨匠ヘルタ・ミュラーが聞き書きを元に記した、ルーマニアからソ連に強制連行された主人公レオポルトのラーゲリでの五年とその後。祖母から託された「お前は必ず戻ってくる」という預言に似た言霊を反芻しながら過ごす極寒と抑圧の月日の中でほろほろと零れ落ち崩壊する生活は、それでもどこか自身の平凡さをそこに合わせていく飄々とした悲しさに満ちていて。その中に、はたと煌めきのように感受される母性のような故郷への懐かしみと、それでいてそこには二度と自分の居場所として戻ることはないだろうという寄る辺なさ。愛や性で埋め尽くせないその沈黙に似た悲痛さを「ひもじさ天使」が呪いのように支配する。
レオが止められない癖のようにつぶやく「ハーゾーヴェー(ああなんて悲しい)」という、言葉。
そこには、ラーゲリでの五年間、そしてその後のレオの一生に横たわるようにして、ただただその言葉があった。歴史と共に生きていくこと程、残酷なことはないのかも知れない。好きなときに好きなように孤独になれない。歴史と共に生きていくことは、数限りない他人の喜怒哀楽を背負う望まれざる共生なのかとも。最後、ほんとうに最後にミュラーが記したレオの独白が頭にこびりついていて。それは読んでみて下さい。美しく、悲しく、いつまでも読後に残留するような感銘を受けた作品。あほのような意見ですが、これが小説か〜、と空いた口が塞がらない程衝撃を受けました。そして孤独とは何かを学んだ。痛切に。
故郷という母型。そこは子宮のように、一度出たら戻ることを許されないのやなと思います。個人的な話をすると、僕も故郷を出た。そこに外部的な強制力がなかったにしろ、一度出たら戻ら(れ)ないという不可逆な感覚はどこかにある。そして僕の祖父もシベリア抑留でラーゲリと似た環境にあった。モスクワに一時寄せられ、またシベリアへ。そして日本に還って来た。僕の祖父も五年間ロシアにいた。
ハーゾーヴェー。僕の祖父はその言葉の代わりに、「寒かった」と笑いながら言った。
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あっ、この本も持って行きますが暗いのばかりじゃないです。楽しいのも持って行くので岡山出店ぜひ。笑
2013/09/23 F.A.Z @ 城下公会堂 - F.A.Z http://faz.hatenablog.com/entry/2013/08/30/002329
2013/09/23 F.A.Z @ 城下公会堂
二人とも、かれこれ十年近い付き合いで。個人的にもとてもとても嬉しい日になりそうです。
夕刻より、営業しております。ノーチャージ(但し要1drinkオーダー)ですのでお気軽にどうぞ。お近くの方、是非ともよしなに。
秋の夕べの読書を楽しみに来て下さいませ。
お茶請け的なF.A.Z謹製お菓子も販売いたします。
ビスコッティ150円
パウンドケーキ250円
クッキー100円
■詳細■
ぜひ○
F.A.Z朗読 + DJ RIP
compufunk recordsのレコード屋スペースで朗読しました。BGMは我が盟友PARANOIA DISCOのDJ RIP。エリフリーデ・イェリネク「したい気分」を。好き、というか、とても思い入れのある作品です。難解に構築された性的イメージのコラージュ。特に淫乱(という言い方は怒られるかもですが)なパートを選んで読ませて頂きました。
DJ RIPも好選曲で。とても楽しかったけど、反省点多く。また機会あればアップデートしていけたらと思います。
思いの外たくさんの人に聴いて貰えたのは嬉しかったな〜。
またどこかの夜のどん底で会いましょう。
F.A.Z整理
自宅2階の本を整理。途中ですが。
ちろちろビール呑みながら再読してしまいつつ。
1階の本をどうするかはまたの機会にして、今日は東京から友人が来る。楽しみだ。