ぼくは覚えている。母がいろんなものから小さなほこりを取っている姿を。
「ぼくは覚えている」
ジョー・ブレイナード 小林久美子訳
すべての文章が「ぼくは覚えている」で始まる、ジョー・ブレイナードの描いた50年代アメリカの心象風景。他愛ない会話、中産階級社会、親愛、母性と怠惰、暴力、父性と抑圧、ゲイセクシャルであること、ジャンクフード、アシッド、大量生産と消費、自動車、映画、大衆音楽、饐えた盛り場の匂い、旅、、。反復がもたらすモザイク的なコラージュと、微妙にズレたトーレスが美しく下らない愛すべきアメリカに帰結するような怪作であり傑作。遠い未来、自分の棺桶に入れたいくらいに大好きな本。