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quiet & happy asylum

グレン・グールド

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グレン・グールド」ドキュメント。良かった。愛と孤独。彼の偏執的で力強い眼。その中に孕んだ寄る辺を求めた弱さ。集中力。没頭。そして常に新しい芸術家であるということ。音楽の、表現の矜恃。

死んだ人を忘れなくて良いのなら、それは良いことなのかも知れない。少なくとも、自分が思い出したくなったら、好きなときに思い出せるから。そう思った。たくさんの個人的な意見に基づくインタビューで溢れた、素敵なドキュメンタリーだった。

雪の中に立った彼の姿の後ろ、何もない空間に広がった想像力と、分からなさ、そして孤独であることの逆説として必ず誰かがそこにいること。

彼の地味な車とコートとマフラーと手袋とモーテル、そして低い椅子とピアノが、二度と会うことのない知った人の記憶のように、霞みながら浮かぶ。